映画「キツツキと雨」について

映画「キツツキと雨」は、2012年に公開された日本映画です。監督は、「南極料理人」で話題を呼んだ沖田修一が務めました。また、役所広司と小栗旬という二人の人気俳優を主演に向かえ、脇には「南極料理人」にも出演した高良健吾や、「クローズZERO」に出演し話題となった高橋努、ドラマや映画はもちろんバラエティでも活躍している臼田あさ美などの若手俳優のほか、平田満、伊武雅刀、山崎努などの大物俳優陣が脇を固めています。豪華な出演者もさることながら、沖田監督が描くハートフルなストーリーももちろん見所の一つです。小さな山村を舞台に、不器用で頑固な木こりと気弱な新人映画監督が、映画の撮影を通して心を通わせ、お互いに成長していく様を温かく描いています。本作は、第24回東京国際映画祭で審査員特別賞を受賞、また第8回ドバイ国際映画祭では、最優秀脚本賞と最優秀編集賞、さらに主演の役所広司が最優秀男優賞を受賞しました。キャッチコピーは「雨でも・・・きっと晴れるさ。」でした。

ストーリー

人里離れた小さな山間の村で、林業を生業にしている克彦(役所広司)は、2年前に妻に先立たれ、現在は無職の息子・浩一(高良健吾)と二人暮しをしています。ある日、いつものようにチェーンソーで木を切り倒していると、突然鳥居と名乗る男(古舘寛治)が話しかけてきます。曰く、「撮影中で、チェーンソーの音が入ってくるので音止めしてください」とのこと。何がなんだかわからない克彦でしたが、どうやら村に映画の撮影隊がやってきた様子。こんな村で撮影かと驚く克彦でしたが、自分には関係のない事と仕事へ戻るのでした。克彦はベテランの木こりであるため、天気を読むのが非常に得意でした。雨が降る気配や止む気配を天気予報よりも敏感に察知します。そんなある日、克彦がいつものように車で仕事場へ向かおうとしていると、溝にはまって立ち往生している車を発見します。鳥居たち撮影隊が乗る車でした。克彦も協力して車を動かそうとしますが、上手くいきません。仕方なく克彦は。自分の車に鳥居と若者・田辺幸一(小栗旬)を乗せ、撮影現場まで送ることに。しかし、撮影予定だった川は雨による増水でとても撮影できる状態ではありません。近くに撮影できそうな川は無いかと訪ねられた克彦は、沸き水が美しい沢へと案内します。しかし案内した沢では撮影スペースが足りないといわれ、今度は広い川へと案内する克彦。しかしそこには大きなラブホテルがあり、とても撮影のイメージとは合いません。鳥居と幸一に振り回され、段々とイライラしてくる克彦。特にどう見ても下っ端である幸一は何もせず、おどおどしてばかりで役に立たないため、「何なんだ、手伝いなさい!」と克彦は幸一に発破をかけます。仕方なく手伝いに行く幸一でしたが、何もさせてもらえません。なぜなら彼こそがこの映画の監督だったからです。そのことに気づいていない克彦にとって、幸一はストレスの要因となっていました。あちこちロケ地を案内させられたあげく、克彦はエキストラとして映画に出演することに。しかもその役どころはゾンビの役だったのです。顔を青白く塗られ、助監督から指示を受けて演技をする克彦でしたが、なかなか上手く出来ません。一方監督である幸一も、パーカーのポケットに手を突っ込み、おどおどして声も小さく、スタッフたちにも思っていることを伝えられません。OKなのかどうかもはっきりといえず、スタッフのため息にただただ「すみません・・・」とつぶやくばかり。そんな様子で進む撮影が上手くいくはずもないのですが、なんとかひと通りの撮影を終えます。そこで、これまで撮った映像の鑑賞会をする事になり、エキストラとして参加した克彦も招待されます。それまで映画なんて興味が無かった克彦ですが、自分の演技している姿を見て、少しだけ興味が湧いてきます。さらに、仕事仲間からも「映画に出るなんてカッコいい」と誉められ、ますます良い気分に。そんななか、村にある共同露天風呂に足を運んだ克彦は、例の青年・幸一に偶然出会います。出演映画の感動覚めやらぬまま、幸一に楽しそうに話しかける克彦。そんな克彦に幸一は、今日で東京に帰るのだと告げます。それならと駅まで幸一を送ることにした克彦。幸一は記念にと映画の台本をプレゼントします。しかしそこへ慌てた鳥居たちスタッフが追いかけてきて幸一を捕獲。彼は情けないことに、監督のプレッシャーに耐えられずに逃げ出そうとしていたのでした。一方、克彦は貰った台本を読み、ストーリーにのめりこんでいきます。そして台本の裏表紙に書かれた「監督:田辺幸一」の文字を見て、ようやく彼が監督であったことに気づくのでした。そんな中、自分の息子・浩一は無職であるにも関わらず、雨が降っても洗濯物を取り込むこともしないでのうのうとご飯を食べている姿に腹が立ち、大喧嘩をしてしまいます。浩一は荷物をまとめ、家を飛び出してしまいます。それと前後して、幸一が台本を取りにやってきます。息子が帰ってきたと思って「浩一か?」と話しかける克彦に、幸一は「はい。」と答えるのでした。再び監督として現場に戻ることを余儀なくされた幸一。目覚ましに無理やり起こされ、靴下を履こうとすると見えない何者かが「青はやめとけ」などと囁きます。映画製作に疲れきった幸一とは裏腹に、克彦は映画のことが気になって仕方がありません。昼休みにこっそり撮影現場に顔を出した克彦は休憩中の幸一に声をかけます。そこで自分の息子と幸一が同い年だと知った克彦は若さのためになかなか自信の持てない幸一に、「木は樹齢100年でやっと一人前。樹齢20年も60年もそんなに変わらない」と励まします。この言葉に勇気を貰った幸一は、初めて「もう一回」と言えるようになるのです。幸一はどんどん監督らしくなっていき、克彦も益々映画にのめりこんでいきます。幸一には手作りの木製ディレクターズチェアをプレゼントし、エキストラが足りないと分かると地元の人たちに声をかけて集めと積極的に映画製作に関わり、ついには仮病を使って仕事を休んでしまう始末。そんな克彦の姿を見て、映画製作班も段々といい雰囲気になり、村人をまるごと巻き込んでの大規模な撮影となっていきます。そんなある日、撮影現場に克彦の姉が現れます。なんと克彦は、妻の三回忌が明日に迫っていることをすっかり忘れていたのです。何の準備もしていないことに気づき、慌てて家に帰る克彦。しかしそこには、きちんと準備された喪服が二着とぐうぐうと眠る息子の浩一の姿がありました。その夜、露天風呂で再び偶然出会った幸一と克彦。風呂上りの蕎麦を食べながら、幸一は、父親が買ってきたビデオカメラが映画監督の道を志したきっかけであること、実家は旅館を経営しているのに後を継がなかったことで、両親によく思われていないのではないかということを話します。そんな幸一に克彦は「自分の買ってきたカメラが息子の人生を変えたんだ。嬉しくてしょうがねえだろうよ」と背中を押すのでした。翌日、撮影現場では大物俳優である羽場(山崎努)の撮影シーンに緊張が走っています。羽場はどうやら「痔」の用で、長く座っているのが辛い様子。それをわかっていながらも、幸一は臆することなく何度もテイクを重ねます。撮影が終わり、羽場に呼び出される幸一。あれだけしつこく演出したのだから怒鳴られるのだろうとビクビクしながら羽場の下へ向かいます。しかし羽場は、そっと手を差出し、「また呼んでくれよ」と笑顔で声をかけるのです。その言葉に幸一は溢れる涙を抑えることが出来ませんでした。一方、妻の三回忌を無事終えた克彦と浩一。定職に付かない浩一に対し、父親の後を継げとしつこく迫る親戚連中に、克彦は「こいつにもこいつの気持ちがあるだろうが!」と怒鳴るのでした。そして迎えた撮影最終日。村人たち総出でクライマックスシーンの撮影に挑んでいましたが、突然土砂降りの大雨に見舞われます。雨の中で撮影しようというクルーに対し幸一は妥協しません。その時克彦がやってきて、雨がもうすぐ止むことを告げます。克彦の言ったとおり、雨雲をぬってわずかに晴れ間がのぞき、撮影は無事に終了。幸一の「OKです」の声も現場に響くほど大きくなりました。後日、映画の世界から現実へと戻った克彦は、いつも通り仕事へと向かいます。しかし、その隣には克彦と同じ作業着を着た息子の浩一の姿がありました。

キャスト

  • 岸克彦・・・役所広司
  • 田辺幸一・・・小栗旬
  • 岸浩一・・・高良健吾
  • 麻生珠恵・・・臼田あさ美
  • 鳥居・・・古舘寛治
  • 柴田・・・黒田大輔
  • 吉岡・・・森下能幸
  • 野宮・・・高橋努
  • 篠田・・・嶋田久作
  • ゴマ満春・・・平田満
  • 石丸・・・伊武雅刀
  • 羽場敬二郎・・・山崎努

スタッフ

  • 監督・・・沖田修一
  • 脚本・・・沖田修一・守屋文雄
  • 企画・・・佐々木史朗、嵐智史
  • 撮影・・・月永雄太
  • 美術・・・安宅紀史
  • 録音・・・岩丸恒
  • 照明・・・高坂俊秀
  • 編集・・・佐藤崇
  • 音楽・・・omu-tone
  • 音楽プロデューサー・・・安井輝
  • 配給・・・角川映画

感想

心温まる映画でした。特に主演の役所さんが見事です。頑固だけれど、どこか憎めなくてコミカルなおじさんの役をやらせたら、彼ほど上手な人はいないのではないかというぐらい似合っています。おじさんなのになぜか途中から可愛らしく見えてくるから不思議です。また、幸一役の小栗旬君もよかったですね。いつもイケメンの役や、できる男の役が多かったので、こういうなよなよっとした自分に自信のない姿は新鮮でした。私の好きなシーンは幸一と克彦が二人であんみつを食べるシーンです。実は二人とも甘い物が大好きなのですが、克彦は血圧が高いため、幸一は撮影が終わるまで甘いものを食べなければ映画は成功するという自分ルールを作っていたために甘いものは断っていたのです。しかしそんな二人が心を通わせ、一緒に一つのあんみつを頬張る姿はこちらまで笑顔になるいいシーンでした。劇中に撮影しているゾンビ映画「UTOPIA~ゾンビ大戦争~」もぜひとも見てみたいですね。克彦がエキストラとして参加したシーンや、村の人たち総出で行ったクライマックスのシーンがどんな風に映っているのか、とても気になります。Youtubeで探すとユートピアの予告編が見られます。「キツツキと雨」を見たあとにこの予告編をみるとまたほっこりしますよ。